微笑みと共に、世界は眠る
「……え?」
涙が一粒、零れ落ちる。知らぬ間に目に溜まっていたようだ。
胸の中が、苦しい。ひどく悲しい。
「――悲、しい?」
どうしてだ? どうして俺は、悲しいんだ?
次々と、涙は少年の頬に落ちる。
敵を殺すなんて、慣れてしまっていたのに。殺してしまった悲しみなんて、薄れてしまっていたのに。
なのにどうして――。
「どうして、後悔してるんだよ」
この少年を撃ってしまったことに、殺してしまったことに、ひどく後悔してしまっている。
「会ったこともない奴なのに……」
刹那、頭痛の痛みがより一層ひどくなる。締め付けられるかのように、胸が苦しい。
「………」
――あの少女に、会いにいこう。白銀の髪を靡かす、あの不思議な少女に。
なぜそう思ったのか、彼はわからなかった。少年を寝かせ、そっと頬を撫でる。
「ごめんな」
どうして俺は、謝ったのだろう。いつもは街の人々を守るためだから仕方ないと、自分に言い聞かせていたのに。
わからない。自分がわからない。あの少女の時と同じように、俺はまた誰かを忘れているのだろうか。
じゃあどうして、俺は忘れているんだ。
「っ……」
頭が割れるかのように痛い。
わからない。何もわからない。
どうしたんだよ、俺。俺自身のことなのに、全くわからないなんて。
「……行こう」
一刻でも早く、彼女のもとへ。