微笑みと共に、世界は眠る
( お兄ちゃん )
脳裏に響く、少年の声。
( 僕も早く、戦いたいんだ )
強い意志を持った瞳と、まだ幼さの残る容姿。
鮮明に蘇る、その景色。
自分の腕に縋(すが)り付く彼の温もりさえも、思い出す。
そして俺は、彼に言った自分の言葉を覚えている。
〝お前はまだ、銃を使いこなせていないだろう〟
戦わせないために、弟を守るために、俺は必死だったんだ。
( 剣を使う。相手の隙を狙うんだ )
けれどお前がどうしても戦場に立つと言うのならば、俺はお前を守ろう。
( 僕もこの街を守りたい )
たとえ俺自身が傷つこうと、絶対に。
――そう、誓ったのに。俺は、守れなかった。
( お兄ちゃんみたいに、強い人になってみせるよ )
自分を守るために、俺は殺した。
( ――僕にとって、お兄ちゃんはヒー(英)ロ(雄)ーなんだ )
俺が、たった一人の弟を殺した。