微笑みと共に、世界は眠る
どこに行こう、と考える前に、足が勝手に前へ出る。鼓動が速くなっているのがわかった。
緩やかな風が頬を撫でる。枯れた噴水がある広場の手前で、青年は立ち止まった。
「――……見つけた」
少し靡く白銀の髪。虚ろな瞳は、薄雲に覆われた空を見つめていた。
声を掛けようとした、その時。
「あれは……!」
少女の後方にある五階建ての廃墟。その四階から、一人の兵士が銃口を彼女に向けていた。
咄嗟に青年は拳銃を取り出し、構える。
――間に合わない。
なぜか、その言葉が頭を過ぎった。
二つの銃声が広場にこだまする。貫通する弾丸、
揺れる白銀の髪。小さな体が、倒れる。
「っ……!」
刹那の差だった。まだ幸いだったことは、その差の先手が彼だったことだ。
青年の銃弾が兵士に貫通した衝撃で、兵士の弾丸は軌道をはずれた。
「大丈夫か!?」
少女のもとへ駆け寄り、傷口を見る。腹部を中心として、白の生地は赤く染まっていく。
くそっ、と顔をしかめ、彼はすぐに止血をしようと手を伸ばした。
けれど、
「やめて」
その手を、少女は拒む。