微笑みと共に、世界は眠る
*
少女と青年は壁に取り付けられた小さな灯りをもとに、薄暗い階段を下り続ける。
「なあ、さっきのあの言葉のことだけど」
前にいた少女はその声に立ち止まり、彼の方に顔だけ振り向く。
( こんな世界、なくなってしまえばいいのかな? )
その言葉の少しした後に、まるで彼女は己を自嘲するかのように小さく笑ったことを、青年は思い出した。
本当は、彼女も分かっているんだ。
いくらそれを聞いたとしても――。
「いくらこの世界がなくなるべきか、そうでないべきかを聞いたとしても、それで世界が変わることはないだろう?」
「……さあ、どうかしらね」
目を伏せながら、静かに少女は言った。
そんな彼女の言葉に、彼は怪訝な顔をする。
「人に聞いただけで世界の未来が左右されるなんて、現実的じゃない」
正論を言う青年に、少女は伏せていた目線を上げた。
ほんの少しの間、二人は見つめ合う。
「あなたが羨ましいわ」
そう言いながら、また前を向いた。