微笑みと共に、世界は眠る



「私が前に来た時は、まだこの写真のままだった」

心が安らぐ、静かな街。誰もが、そう言っていた。写真に写っている時計台を指差す。

「戦争が勃発する少し前に、この時計台が壊され、そしてこの廃墟ビルが建てられたの」

このビルの下に、地下街があると思わせるために。このビルが、この街の核であると思わせるために。

「戦争が起こる前……」

この街のかつての姿を、彼女は知っている。それは以前一度、此処に来たことがあるから。

そして戦争が始まる前に、この街の姿は変わった。
……でもそれは変だ。まだ二十歳にも満たないような少女が、その時代に生きているはずがない。

「後半は様々な国の風景を収めた写真よ」

「あ、ああ……」

不自然さを感じながらも、青年は再びページを捲っていく。


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