微笑みと共に、世界は眠る
もし俺が彼女と同じ立場だったら、どうしているんだろう。活気溢れる日常ならまだしも、殺し合いの日々のなか、死ぬこともできず、永遠と……。
「これ以上あなたの傍にいると、私はあなたを絶望させる」
そして私は、また異常者を殺してしまう。
一人で抱え込む辛さから逃れようと、誰かに私の気持ちをわかってもらいたいと、願ってしまうせいで。
「だから……」
「たとえ絶望してしまおうと、俺は受け入れたい。〝君〟と、この世界の全てを。もうこれ以上、一人で悩み苦しんでほしくないんだ」
そしてどうか、
「だから俺は、君の傍にいる」
少しでも、君の心が救われますように。
「っ……」
少女は唇を噛み締める。喉の奥が焼けてしまうかのような痛みが走った。
込み上げようとする涙を、必死に抑える。
――ああ、どうか、彼だけは死にませんように。
たとえこの世界が歪み続けようと、彼だけは、消えてしまいませんように。
青年の背に手を回し、強く、彼女は彼を抱き締めた。