微笑みと共に、世界は眠る


「……この世界が再生することも、戦争が終わりを迎えることも……」

彼は信じ続けた。いつかこの戦争は、終わると。戦員不足で、争うことができなくなると。
けれどそれは、もう――。

「もう決して、あり得ないことなの」

重苦しい彼女の口調が、彼の心に亀裂を入れた。

「――……」

信じ続けたことが無意味なことだったとわかり、そして信じるものを失った時、〝人間〟は絶望に浸り、そこから抜け出すことができるのだろうか。

「あなたの望みが叶うことは、ないの」

私にはわからない。彼ら人間の仕組みなんて。
そして私には、わからない。彼らの心の儚さなんて。

人間の形をしていて、けれど人間でない私。〝世界〟であって、けれど世界になりきれていない私。
そしてこの世界で生きる彼ら(コピー)は、もう――。

少女は俯く。鼓動が騒がしい。

大丈夫。きっと彼は、大丈夫だから。彼を、信じましょう?

優しくなだめるかのように、彼女は自分に言った。

「……この世界は、人々が幸せに暮す裏に隠された、ある〝仕掛け〟を持っているの」

世界が歪まなければ、それは決して発動することのない、不必要な〝仕掛け〟が。

「そしてそれが発動してしまったら……、あなたたち人間は、死んでも生き返ることになる」

真っ直ぐと青年を見つめる。それは彼を信じている、強い眼差し。


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