微笑みと共に、世界は眠る
「――……ごめん、母さん」
小さく呟かれたその言葉。少女は目を伏せることしかできなかった。
二人は口を閉ざし、ただ階段を下り続ける。
あと数段で下り終わる、というところで、青年は立ち止まった。
「……この争いが」
彼の声に、彼女は足を止め、振り返る。
「この戦争が終わりを迎えることは……もうないんだな」
「……ええ」
少女は目を逸らす。
「はは、馬鹿だなあ、俺」
まるで力が抜けたかのように、青年は階段の上に座り込んだ。
( いつか必ず、この争いは終わる! 無限に兵士がいるわけじゃないんだ! )
声を上げて言ったその言葉が、脳裏に響く。頭を抱え、彼は鼻で笑う。
「ほんと、馬鹿だよ。死んだ奴が蘇生し続ける限り、戦争が終わることはないのに……。なのに俺は、いつか必ず終わると信じ続けて……」