微笑みと共に、世界は眠る


この争いは終わらない。永遠に。
それは誰も、自ら負けを認めようとはしないせいで。〝蘇生〟の仕掛けが、発動してしまったせいで。

少女は彼に近寄り、古びた本を置く。そしてそのまま膝をつき、青年の頭を胸元に抱き寄せた。

「お願い、約束して。あの言葉を」

それは今にも泣きそうな、悲しい声。

( どうかあなたは、死なないで )

脳裏に響いたその言葉に、彼は目を見開ける。

「お願いだから、私の言葉を――この世界を、受け入れて」

あなたを喪(うしな)ってしまうのは、あまりにも辛いことだから。
そして、

「私はあなたを殺したくない。私のせいで、唯一(異)の(常)存在(者)を喪うのは、もう嫌なの」

異常者(あなた)に〝私〟を否定されることは、悲しいから。どうかあなたは、耐えて。

「――ごめん」

青年は顔を上げる。すぐ傍にある少女の頬に、手を添えた。


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