微笑みと共に、世界は眠る
「……もう、大丈夫だから。ごめんな」
ああ、本当に、俺は馬鹿で、弱い奴だ。心に罅(ひび)が一度入ると、次々と亀裂が入り、その崩れ落ちる怖さから、悲しさから逃れようと、楽な方へ手を伸ばしてしまいそうになるのだから。
「今日は謝ってばかりだな」
優しげな笑みと、柔らかい声。
「……あなたは何も悪くない」
彼の肩に彼女は顔を埋める。
「異常者(あなたたち)は何も悪くないのに……、あの子も――あの少女も、私に謝った。全ては、私のせいなのに。彼女が死んでしまったのも……」
戦争が勃発してしまったのも、と言いかけて、口を噤んだ。
「どうして君は、彼女を〝殺した〟と言うんだ。君は何も、していないのに」
「……私が、〝仕組み〟を教えたせいよ」
少女は顔を上げる。
「――あなたに否定されるのは、苦ね」
痛々しい笑み。弱弱しい声。そっと、青年の額に触れる。刹那、彼の中に何かが流れ込んできた。