微笑みと共に、世界は眠る
「みんなが……みんなが……!」
少女は膝から崩れ落ちる。
「……このままじゃ、〝仕掛け〟が発動してしまう」
「……仕掛、け?」
彼女は呆然と立ち尽くす。何も頭が働かず、無意識に彼女は口を動かした。
「この世界にいる人間の三分の二が死んでしまえば、仕掛けが発動してしまう……。そして兵士は減らなくなり、きっと戦争も終わらない。永遠に、殺し合いは続いてしまう」
少女は彼女を見上げる。掠れた声で、少女は言う。
「そんな仕組み……嘘、だよね……?」
彼女は静かに首を横に振った。
「この世界で人間が滅びてしまえば、創った意味がなくなってしまうから……」
本物の世界と同じようにならないために。人類を、守るために。
「だからってそんな……そんな〝仕掛け〟を創るなんて……!」
少女は彼女のスカートを強く引っ張る。その時にようやく彼女は我に返り、決して口にしてはいけないことを言ってしまったと気付いた。
「こんな殺し合う日常なんて……こんな歪んでいく世界なんて、存在しなければよかったのに!」
その言葉に、彼女は口を閉ざす。青年の胸の中で、何か壊れる音がした。