微笑みと共に、世界は眠る


「みんなが……みんなが……!」

少女は膝から崩れ落ちる。

「……このままじゃ、〝仕掛け〟が発動してしまう」

「……仕掛、け?」

彼女は呆然と立ち尽くす。何も頭が働かず、無意識に彼女は口を動かした。

「この世界にいる人間の三分の二が死んでしまえば、仕掛けが発動してしまう……。そして兵士は減らなくなり、きっと戦争も終わらない。永遠に、殺し合いは続いてしまう」

少女は彼女を見上げる。掠れた声で、少女は言う。

「そんな仕組み……嘘、だよね……?」

彼女は静かに首を横に振った。

「この世界で人間が滅びてしまえば、創った意味がなくなってしまうから……」

本物の世界と同じようにならないために。人類を、守るために。

「だからってそんな……そんな〝仕掛け〟を創るなんて……!」

少女は彼女のスカートを強く引っ張る。その時にようやく彼女は我に返り、決して口にしてはいけないことを言ってしまったと気付いた。

「こんな殺し合う日常なんて……こんな歪んでいく世界なんて、存在しなければよかったのに!」

その言葉に、彼女は口を閉ざす。青年の胸の中で、何か壊れる音がした。

< 86 / 122 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop