微笑みと共に、世界は眠る
重たい瞼を上げると、白い天井が目に入る。だるさを感じながらも体を起こし、彼は額を押さえる。
「ここは……」
そう言って、すぐに自分がどこにいるのか気付く。見慣れたその部屋は、兵士ひとりひとりに与えられたものである。
そこにあるものはベッドに棚、そしてデスクとった質素なものだが、一部屋ずつに兵士の体温を感知し、記録する機能や、それを基に自動的に健康状態を調べる機能がついていた。
壁に表示されている時計に目をやり、青年はぎょっとした。
「嘘だろ? もう昼過ぎじゃないか」
戦場へと向かわなければいけない時間はとうに過ぎている。
おかしい。時間になっても部屋を出ていなければ、放送が入るはずなのに……。
困惑する彼の耳に、機械音が入る。
「目覚めたようだな。体調はどうだ」
その声は低く、聞きなれたもの。
「……少しだるさを感じますが、特に異常はありません」
彼の返事に、幹部であるその男はそうか、と言う。
「昨夜から体温が上がり続けていたため、夜半(よわ)にリクアを体に注入しておいた。今日は念のため、安静にしておくように」
「そうだったんですか……。はい、わかりました」
そう言うと、ぷつりと放送は切れる。右腕を見るとガーゼが貼られていた。