微笑みと共に、世界は眠る



高い体温を一定まで下げ、それをしばらく持続させることにより、心身の乱れを落ち着かせる効果を持つ、リクアと呼ばれる薬。てき面なリクアの効果により、すぐに戦場へ復帰することが可能となる、とても便利な薬である。

「体がいつもより重い……」

けれど効果が効きやすい反面、眠気や頭痛、だるさ、ひどくなれば思考能力低下という副作用が起こる場合が多い。

「体温はそれほど高くないな。少しすれば、だるさも治まるか」

嘆息し、彼は再び横になる。陽が昇っている間に、こんな風に落ち着くのはとても久しかった。
額に手を置き、一面白である天井を見つめる。

( 私が〝仕組み〟のことを口にしたせいで、あの子は死んだ )

脳裏に響く、少女の声。彼は目を閉じ、昨日のことを思い出す。

( 私が殺したも同然なの )

そう言って俯く彼女の頭を、青年は静かに抱き寄せる。


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