微笑みと共に、世界は眠る
靡く髪を手で押さえながら、少女は振り返る。青の掛かった翡翠色の瞳と視線が絡まると、彼女は柔らかく微笑んだ。
彼は目に映るその風景に、少女の姿に、安堵の胸を撫で下ろす。そして優しく微笑み、彼女の隣にいく。
しばらくの間二人はどちらからとも口を開けることはなく、目の前に広がる風景を眺めていた。
「ひとつ、訊いてもいいか?」
静かに、青年は口を開ける。ええ、と彼女は答えた。
「どうして君は、いつもこの廃墟ビルの屋上にいるんだ?」
此処に来れば、少女に会うことができる。そう思ってしまうほど、彼女はいつも此処にいる。
「此処からだと、変わり果てた街並みを見渡すことができて……、歪んだ世界を、見つめやすいからよ」
それに、と彼女は続ける。
「此処は、安全だから。コアが傷つく心配もないの」
その言葉に、彼は疑問を浮かべる。
いくらビルの屋上だからといっても、狙いを定め発砲されてしまえば、体を打ち抜かれてしまう可能性も低くない。コアが傷つくことがないと、断言できる訳でもない。
けれど彼女は、言い切っている。それは何かを知っているから。