微笑みと共に、世界は眠る


「……私……」

それは小さく、震えた声だった。震える指先を、彼女は握り締める。

きっと彼は、気付いてる。私が何かを隠していることに。なのに、何も訊いてはこない。
それはきっと、私を信じているから。

だから私は、嘘をつきたくない。〝真相〟を、隠し続けたくない。
けれど私は……、憎まれたくない。誰に嫌われようが憎まれようが、そんなことは気にしない。
でも、あなただけには……。

「――……」

手に感じる温もりに、少女は目を見開け、顔を上げる。

「焦らなくていいから」

「……っ」

胸の中が、締め付けられる。

――ああ、やっぱり私にはできない。

「俺は、いつまでも待つよ」

その言葉に、その笑みに、少女の体の力が抜けていく。手から伝わる青年の温もりに、不安で乱れた心が落ち着いていく。

憎まれる不安から逃げようと、あなたに嘘をつくのなんて、できない。

「……私、あなたに嘘をついたの」

この世界を、〝私〟を受け入れてくれたあなたを騙し続けるくらいなら、 傷つく方がいい。

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