Genius 2nd ~葦原~
神在月(カミアリツキ)に入り涼やかになった風が、少女の髪を揺らす。




ザッ



ヒトなど滅多に訪れない大樹に近づく一人の青年


白い髪に、優しい黄金色の瞳


しかしその瞳には疲労の色が浮かんでいる。


都の街を見下ろす丘に立ち目を閉じる。



[何処にいる…?
……朱雀、君はどこ……]



何度となく“心<サバナ>”で呼び掛ける。


“心”は彼らが持つ霊力を媒体とした思念伝達方法

相手の気配・霊力の波長に自分の霊力を合わせ呼び掛ける


彼は探しビトの気配を感じることができても、掴むコトができない。


現れては消え、つかんでも指の間からすり抜けていく。



[お願いだ、応えてくれ!!]



しかし、呼び掛けに応える者はいない



― ダメ…か……
ここなら…朱雀の樹の梺なら届くと思ったけど…


地表に出た根に座り樹の肌をそっと撫でる。


ー 朱雀が消えてもう1ヶ月…
…気配が完全に無くなった訳ではない……




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