特別なのはあなただけ。
仲良くしてる友人、永原真央(ながはらまお)には
「なにそれ!イケメンで皆から人気がありしかも文武両道のあの羽生敦志から毎日しつこく付き纏われてる!?羨ましいじゃないかこんちくしょう!まるでリアルが充実しているリア充みたいじゃないか!しかも年下とか!年下萌えじゃん!まぁ冬香は3月生まれだから4月生まれの彼とはあんまり大差ないけどねそしてネタいただきます!これで1冊書けるわ!あ、もちろん男同士に変えるけど☆BLサイコー!!」
となんか早口でよくわからないことを言われた。
とにかく羨ましがっていることは分かったが真央は被害にあってないからそう言えるのだ。
少女は帽子を深く被り歩きはじめた。
アイツは何も分かってない。
少女は心の中でそう呟く。
「やっぱり戻って来ちゃいましたー、冬香さんに会えないなんてやっぱりキツイですよ」
「ねぇ何で普通に戻って来るの?ここはもう戻って来ないところだよね?私の言ったこと覚えてない?」
普通に戻って来た敦志をぶん殴りたくなった少女は右手をグーの形にする。しかし敦志は笑顔でそれを受け流す。
「冬香さん、俺が冬香さんの言ったことを忘れると思います?それに女子がグーパンチなんかしちゃ駄目ですよ。あっ今からどこか行くんなら付き合いましょうか?」
選択肢を与えられたようで与えられていない。さっき邪魔と言って戻って来たのだから「いいえ、嫌ですもう帰ってください」と言っても帰らない。
コイツはなんて言ってもついて来る。
「・・・・・・何だか急に泣きたくなってきた」
「なら俺が抱いてあげますよ!」
誰かコイツに常識を教えて下さい。
少女―――夏川冬香は春休みに入ってから毎日そう思っている。
ふと冬香はチャットのある人物が書いた言葉を思い出す。
逆に尊敬出来ますよ、か・・・。
この男は『逆に』と付け足さなくても尊敬しようとすれば尊敬できる奴だと思うが・・・・・・。
こんなの尊敬したら私も末期だな。