お見合い相手は変態でした
あまりじろじろと見るわけにいかずこっそりと視線を送ってはいたものの、ロベルトとバチッと目線が合ってしまい、思わず手を滑らせ、手にしていたポットを落としそうになってしまった。
これ以上見ていたら、怪しまれてしまうだろう。


エルザは何事もなかったかのように平常心を装い、軽く呼吸を整えてティーポットからカップに紅茶を注いだ。
その間、エルザは自分がクリスマスにじわじわとオーブンであぶられている七面鳥かと思えるほど、言いようのない視線を横っ面に感じ、背筋がゾワゾワした。



見られている!これは確実に見られている!今、目を合わせたら、私は死ぬ!



もちろん死ぬ訳はないのだが、死にも値するような危機的状況に陥りそうな予感がして、エルザは必死にロベルトの方を見ないように努めた。
理由はわからないが、ロベルトが会話の最中にエルザの方に視線をやっているのは明白だった。
だが、紅茶を給仕するのにどうしてもロベルトの方にはいかなくてはならない。
誰か助けてくれと叫びそうになったところで話が止まり、レイモンドとキース侯爵がチェアから立つのが見えた。



「そろそろ2人だけで話をするのが良いだろう。お互いをよく知る良い機会だと思いなさい。」

「ではキース侯爵は、私の書斎へ。ご覧にいれたい資料があるのです。エルザ、私たちの分は書斎へ。」

「う、承りました。」



レイモンドはエルザに命令をすると、キース侯爵と共に応接間を出て行ってしまった。
これはいろんな意味で危機的状況だった。
ものすごい視線を送ってくるロベルトに、紅茶を給仕しないといけない状況なのは変わらない。


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