レベッカ




ピースフォース、と無造作に書かれた看板の横を通りすぎる。

門を通ると、一番街の比較的上品な町並みとは、歩く人も飛び交う言葉も、がらりと変わる。
服装は華やかな色合いの暖かいものから、軽くて動きやすい武骨なものに変わり、足元も毛糸で編んだ靴や滑らかな革靴ではなく、爪先の重く硬い丈夫なブーツばかりが見られるようになる。

それ自体が一つの小さな町のようになっているMYの敷地内を、アレンとロイは離れて歩いていた。
きっと誰も、二人が一緒に出掛けていたなんて思わないだろう。


ロイとアレンの仲が険悪だと思われている原因は、こういうところにある。
彼らが本部の目立つ場で穏やかに行動を共にすることは、ほとんどないのだ。

話をする時は大抵屋上に上がっていて、下に降りてくると、なぜか喧嘩ばかりしている。
きっとナイジェルやキュウがからかってくるせいでそうなるのだが、二人が実はそれほど仲が悪いわけではないと知っているのも、同期の友人たちを除けば、エドくらいのものだ。


それに、ロイはあまり気にしていないが、アレンは、人目につく場所でロイと必要以上に接することを、避けているふしがある。

ただでさえ、女だというだけの理由で、しなくていい苦労をしてきたのだ。
変な噂を立てられたくないのだろう。


(……そういう噂を、聞かれたくない人でもいんのか)





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