レベッカ
「ロイ君」
後ろから声をかけられて、ロイは振り返る。
突然すぐ背後から話しかけられたが、ロイは特に驚いたりもしなかった。
人が近づいて来る気配は感じていたし、消しきれていない足音や雰囲気から、それが誰なのかもわかっていたからだ。
「……マルクさん」
「よう。調子はどうだ?」
噂をすれば影、と言うには、微妙だろうか。
とはいえ、マルクがこんなふうに、エドがよくするように親しげに隊員に話しかけることは、ほとんどない。
つまり、近付いて来るということは、何かあるということだ。
「俺は万全ですよ」
「特攻隊長が怪我したおかげで、君のところは最近暇だろう。少しは休めて、いいんじゃないか? なんてな」
――ロイに、アレンが歩くのもやっとな大怪我をしたことを、少しでも喜べというのか。
怒りにひきつる目元をなんとか堪えながら、調子を合わせる。
「そんなことないですよ。時間があるんだからって、経理に駆り出されてます」
「そうか、そうか。君の頭脳は、こんな……こんなところでは、貴重だからな」