レベッカ
その言葉尻には、明らかに嘲笑の色があった。
ロイやアレンにとって、いや、ここにいる多くの人間にとっての、唯一無二の大事な居場所を、“こんなところ”とは。
それも、わざわざ、あえて、そこに含ませた意味がありありとわかるような、嫌味ったらしい声色で。
よくここまで、いちいち人の神経を逆撫でする言い方をしてくれるものだ。
だがロイは、人を苛立たせる天才を前にしても、表面上はつとめてにこやかにしていた。
変な目を付けられてはいけない。
何があってもじっとして、相手がぼろを出すのを待つべきなのだ。
「大変だろう、こんなに働かされているのに、給料は他の隊員と一緒じゃあな」
きた、と思った。
自分の側につけば報酬は弾むと、遠回しに言っているのだ。
ロイはそれに気づかないふりをして、答える。
「いえ、そんなことは。俺は当然の働きをしてるまです」
「ほう、関心だな。本当に君はよくできた部下だよ」
そう言った時、ほんの少しだけ、マルクの表情が変化した。
一瞬にも満たないくらいだが、眉間に皺が寄る。
マルクだって、ロイの頭脳があってその言葉の意図に気付かないわけがないと、わかっているのだ。
つまり、わざと濁したことも気付かれている。
これは、マルクの圧力なのだ。
さっさと腹を決めて、どちら側につくか決断しろ、という。