レベッカ
一人屋上へ上がり、訓練場でめいめいの鍛練に勤しむ同僚たちを、恨めしそうにフェンス越しに眺めていた。
自分も早くまたそこに追い付かなければ、という焦りがあるのに、焦って下手をすれば回復が遅れるということも理解できる。
動かない脚と、すぐに疲れる体と、思い出したように痛む傷口が、もどかしくてしかたがない。
松葉杖もいい加減うんざりなのに、走ったり跳ねたりという、今まで当たり前にできていた動作が、できないのだ。
苛立ったアレンは、ぐちぐちと独り言を漏らしていた。
「なっにが『俺の許可なく』だっつの! てゆーかいい加減本気でうっとーしいんだよ、あたしの何なんだよ、保護者かよ、親父かよっ」
ロイは、アレンが勝手にリハビリと称した無茶をしないかが心配なのか、ここのところずっと付きっきりになっていた。
空に向かって吐き捨てるように言うと、少しは苛々も収まったような気がして、アレンは俯く。
親父かよ、と言いはしたが、彼女は『父親』という存在を、ほとんど知らない。
アレンの両親は、彼女が幼い頃、目の前で、大きな荷車の下敷きになって死んでしまった。
だから、本当にロイが父親みたいなのか、保護者というのはこういうものなのかどうか、アレンは知らないのだ。
それに。