レベッカ
目の前の霧が晴れたと思ったら、足は切り立った崖から半歩出ていた。
そのくらい唐突に突き付けられた危険は、あまりにも突拍子がなく、そしてあまりにも、否定しきれないものだった。
アレンは、顔を真っ青にしている。
「いや、でも……マルク派に、そんな兵力あんのかよ」
「そ……そうだよ、いくら焦ってるからってそんな」
「そう思っていたけどな……そうとも限らなくなってきたってことだ。現にアレン、お前の怪我だってそうだろう」
そう言われてしまうと、どうしたって楽観的になんてなれない。
自分の怪我だから、アレンは軽く考えていたのだ。
もしロイか、ニラやキュウやナイジェルが何者かのせいで大怪我を負わされていたとしたら、もっと危機感を持てていただろう。
あれが予兆だったとするなら、もしかしたら今この鍛練場に誰かが侵入して来て、弱っているアレンもろとも全員皆殺しなんてことも、あり得なくはない気がしてきてしまう。