レベッカ



“捕らわれ”なんて言葉はMYにしては平和的な響きだが、実のところ、急襲を受けて気絶して、気がついたらここに縛り付けられていた、というだけのことだ。


「だから、そんな証拠がどこにあんのかって聞いてんの」
「証拠か。心配するな、こちらで用意しておいた」


彼はそう言って、下品に笑った。
周りに立つ十五人ほどの男たちも、似たように笑う。


「……気利くじゃん。なんて、言うわけないでしょ」


ロイは、口許だけで笑って、目の前に立つ男――マルクを見据えた。


「一応聞いておこうかな、ロイ君。スパイの嫌疑をかけられたままここで死ぬか、それとも、私とともにピースフォースを変えるか」


マルクは、いやらしい笑みを深くしながら、ロイの顔を覗き込んだ。
丸い顔に湛えた笑顔はそれだけ見れば穏やかで人が良さそうで、だからこそ気味が悪くてしょうがない。


「どちらを選ぶ?」





< 138 / 226 >

この作品をシェア

pagetop