レベッカ
“捕らわれ”なんて言葉はMYにしては平和的な響きだが、実のところ、急襲を受けて気絶して、気がついたらここに縛り付けられていた、というだけのことだ。
「だから、そんな証拠がどこにあんのかって聞いてんの」
「証拠か。心配するな、こちらで用意しておいた」
彼はそう言って、下品に笑った。
周りに立つ十五人ほどの男たちも、似たように笑う。
「……気利くじゃん。なんて、言うわけないでしょ」
ロイは、口許だけで笑って、目の前に立つ男――マルクを見据えた。
「一応聞いておこうかな、ロイ君。スパイの嫌疑をかけられたままここで死ぬか、それとも、私とともにピースフォースを変えるか」
マルクは、いやらしい笑みを深くしながら、ロイの顔を覗き込んだ。
丸い顔に湛えた笑顔はそれだけ見れば穏やかで人が良さそうで、だからこそ気味が悪くてしょうがない。
「どちらを選ぶ?」