レベッカ



「おいっ、」


ロイは身を乗り出して、マルクに声をかける。

だが、腕は後ろに回して縛られているため、満足に動けるわけもなく、胸ぐらを近くにいた隊員に捕まれて、柱に打ち付けられた。
こみかみが、柱の角にぶつかる。

続いて顔を続けざまに五発ほど殴られて、ロイはぐったりと首を項垂れさせた。

意識がはっきりとしない。
右側の視界が赤い。

捕らえられそうになった時、地面に額を叩きつけられてできた傷から、また血が流れ出していた。


(――視界が悪い)


照準が命のライフルにとって、視界の悪さは致命的でもある。

だがはじめに殴り付けられた時、そんな違和感のある景色の中で、ロイは確かに見たものがあったのだ。





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