レベッカ
「パウルはどうした?」
「なんのことだ」
「あいつがマルク派って噂は、嘘なんでしょ」
「……わかってるなら、聞く必要はないだろ」
「そー。わかってるよ、さっきお前が、パウルを撃ったことも」
そう言った瞬間、ハリーは顔色を変えた。
つかつかと歩み寄ってきて、握った銃のグリップを、ロイの頬に叩きつける。
助っ人に駆り出されたロイが、裏路地で背後から殴り付けられたのは、突然のことだった。
途端に群がるようにして、拳や足が降ってくる。
頭を叩きつけられたのが、舗装もされていない土が剥き出しの地面で、助かったかもしれない。
もしあれが石で固められた道だったら、額が切れるどころでは済まなかっただろう。
しかし滅茶苦茶に殴られながらも、ロイはその時、見ていたのだ。
マルク派であるはずの――本来ならば彼らの味方であるはずのパウルが、銃声の後、地面に倒れ込んだのを。