レベッカ



彼は、ロイと同じ、ライフルのアーミーだ。

射程距離の長いライフルは他のアーミーの隊員たちと隊が組みやすく、MYでは重宝される存在だ。
ハリーも入隊当初から実働隊に編成されるほど、優秀な隊員である。

だがハリーは、自分の能力を呪っていた。
ロイと同じ、自分の能力を。

狙撃手の中では抜群に精度が高く、しかも高い位置から状況を認識して把握した上で、最良の判断を下して指令を出せる。
そんなロイと似たような能力を持っていれば、どうしても比較されてしまうものだ。

結果、狙撃手としても二番手、接近戦でも隊長であるパウルには叶わない、一番にはなれない男と認識されるようになった。
それは、ハリーの自尊心を、確実に蝕んでいたのだ。


「お前とパウルさんが死ねば……! 俺だってすげぇんだってことを、わかってもらえるはずなんだよ!」
「……俺とパウル、だけで、いいの。強敵、残ってんじゃん」
「アレンさんたちのことか? それなら、大した問題じゃない」
「……は、?」


息が切れる。
視界が霞む。

出血が止まりかける度に殴られたショックで傷口が開いているらしく、血が乾く気配は一向にない。

流れる血は、一緒に体力と気力も体の外へ流してしまう。
ロイは、例え腕を真っ直ぐ伸ばすことができたって、恐らく撃てないだろう、というところまで、体力を失っていた。





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