レベッカ
「……まさか、だからこんな工場に」
「そうだよ、ロイさんともあろう人が、気付くの遅すぎたんじゃないですか!? 見ろよこの鉄の壁! こんなところでマシンガンなんか撃ったら、どうなるかわかるよなぁ!?」
両手を広げて笑い声を上げる仕草が、憎たらしい。
適当で手近な廃工場に連れ込んだわけではなく、わざわざこの場所を選んだのだ。
石ではなく、鉄の壁や床がある――銃弾を跳ね返す場所を。
「アレンのマシンガンを封じるっての……」
「そうですよ、あんな細腕で何ができる? ただでさえ歩くのがやっとなのに!」
高揚したようなハリーの言葉に、ロイが、苛立たしげな溜め息を吐いた、その時だった。
――ダアアァァァァァァァァン……!!
半ば吹き飛ばされたように、勢いよく開かれた扉。
「噂をすれば」と、ハリーが呟く。
ハリーが仕掛けた罠の中に颯爽と姿を現したアレンは、きちんと二本の脚で、一人で立っていた。