レベッカ



「……どこ行くの」


長い腕が肩と首に回って、アレンの体を引き戻した。
抱き締めるというより羽交い締めに近いハグは、アレンを我に返すには、十分だった。


「ロイ」
「制服、着替えればいいのに」
「でも……いや、ロイ、制服嫌いだよな」
「こんなことでもないと着ないからね」


紺色の制服に包まれた、アレンの細い肩に、ロイの顎が乗る。

海の色に似た制服を着たMY全隊員が、神妙な面持ちで波間に消えていくパウルを見送る光景には、妙な迫力のようなものがあった。
誰かを見送る時には、MYではいつも決まってそうするのだ。

だからロイは、この制服が嫌いなのだろう。

彼にとって海は、誰かを飲み込むものなのだ。


「せっかく治りかけだったのに、また怪我して」


ロイが、アレンの頬をつつく。
ハリーが撃った弾が掠めた傷だ。





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