レベッカ



「今朝はご苦労さま。人質にとられた方の怪我も、大したことはなかったそうだよ」
「本当ですか? よかった」


視線をしっかりあわせてエドにそう言われたアレンは、あからさまなほど目を輝かせる。
さっきまで苛立たしげに尖っていた口許が、わずかに笑ってさえいる。

それを横目で見たロイの表情が、一瞬だけ、わずかに曇った。


「器物破損の被害も最小限に食い止められたようだし」
「いえ、そんな、まだまだです。どっかのバカが暴走しなければもう少し抑えられたんですけど」
「な……、うるっさいな! 人質助かったんだからいいだろ!」
「こら、その辺にしておけよ」


また苦笑いを浮かべて、「じゃあ、これから会議があるから」と、エドは去って行った。
ニラたち三人も、時計を見て言う。


「お、もう昼じゃん。食堂行くか」
「あぁ」
「いやぁ、朝から働きました」
「おい! お前らも行くだろ?」


ナイジェルの声に、ロイは肯定の返事を返しながらも、アレンの横顔を見ていた。
エドの後ろ姿を、じっと見ている。
その顔は、幼馴染みのロイですら見たことのない表情で。

ロイは、目を逸らして、言った。


「バカ食い女。食いっぱぐれても知らないよ?」
「……今行くっつーの、」




< 17 / 226 >

この作品をシェア

pagetop