レベッカ
そんなある日。
怪我が治ってようやく復帰したアレンは、市民からの通報を受け、急いで現場に向かおうとしていた。
アーミーに武器の携帯は必要ないので、出動時は身軽なものである。
それでも一応の防備として、防弾用の上着とヘルメットを抱えて、足を早めていた時のことだった。
背後からかけられた声に、アレンは振り返る。
そして、身を強張らせた。
「……マルクさん」
「もう復帰したんだってな、これから出動か? もう少し休ませてくれればいいのに、人使いの荒い組織だよなぁ」
「いえ……休んでばかりじゃ、体が鈍りますんで」
人当たりのいい笑顔に、アレンの背筋がぴり、と緊張する。
こんなふうにフランクに話しかけてくる時はなにか裏がある、気を付けておけと、ロイに言い含められていたのだ。
そして、あんな噂が流れている以上、近いうちに必ず、そうやって接触してくるだろうと。