レベッカ
アレンが、マルク派に寝返った。
その噂は、ロイとアレンがわざと流したものだった。
ただでさえ普段から、犬猿の仲、なんて言われている二人である。
ハリーの事件を機に、これを情報の撹乱に使えないかと、ロイが提案してきたのだ。
そしてやはり彼の予想通り、それほど待たずにマルクの方から接触してきた。
アレンの真意を図りたいのだろう。
こうしている中で、マルクの方からぼろを出してくれれば、こっちのものだ。
それがなければ、こちらから仕掛けるまで。
マルクは、にこにこと笑顔を浮かべたままで、言った。
「だがな、いつも全力で向かっていては、疲れも溜まるし体も傷つくだろう。たまには力を抜いたらどうだ?」
「え?」
「通報を受けたからって、皆を皆、再起不能にしなければいけないわけじゃあるまい。MYに逆らえば痛い目を見ると、わからせればいいだけなんだから」
マルクの言葉の意図がわからず、アレンは首を傾げた。
つまりは、出動要請を受ける度に全力で犯罪者に向かい、半殺しも珍しくないアレンのやり方を、変えろということなのだろうか。
(それって、つまり……)
どうやら、ロイがマルクに聞かされたのと、似たようなことを持ちかけられているらしい。
彼の場合は、悪人を徹底的に痛め付けるアレンの暴走を、一歩手前で止めろ、という話だった。