レベッカ



「え、っと……力を抜くっていうのは」
「なに、手を抜けっていうんじゃない。ただもう少しだけ、余裕を持ってみたらどうだ? いつもそんなじゃ、君の負担も大変なものだろう?」
「はぁ……」


とにかくマルクは、アレンの暴走機関銃っぷりが控えめになることを望んでいるようだ。
なぜかは全くわからないが、ロイには、とりあえず調子を合わせておけと言われている。

アレンは、ぎこちなくではあるが、納得したように頷いた。


「そう……ですね。しょっちゅうこんな怪我してたんじゃ、身がもたないですし」


アレンに演技なんて器用な真似ができるわけもなく、少し不自然すぎたかと不安になって、マルクをちらりと見た。

だが、その少し堅い頷きが、「よくよく考えてみれば、確かにそれもそうだ」という心の動きだと受け取ったらしい。
満足そうに一、二度と頷き返すと、「体は大事にな。頑張ってきてくれ」と言った。


「はい。失礼します」


そう言って、アレンは再び足を早める。

マルクの粘着質な視線が、いつまでも離れないような気がした。

そして、今振り返っては、絶対いけない、という気も。





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