レベッカ
右腕を構える。
港に追い込んだ相手は、道端で通行人を殴り付けて所持品を奪うという、通り魔的な強盗を何度となく繰り返した男だった。
当たりどころが悪く、死者も一人出ている。
いつもならば、少しの容赦もなくたこ殴りか、両腕両足に躊躇なく銃弾をぶち込んでいるところだ。
だが、海を背にした通り魔に対してアレンが構えたのは、マシンガンに変化させた鈍色の右腕ではなく、細い人差し指だった。
隣に立つロイに、軽い調子で聞く。
「何件だっけ?」
「二十三件」
「ふーん。じゃあ、二十三発だな」
怯えて顔をひきつらせる男に、薄く笑ってみせる。
「冗談。お前なんかこれで十分だよ」
その言葉に、キュウが目を丸くした。
それほど、彼女の口から発せられるには考えられない台詞だったのだ。
ナイジェルも口を開けたままアレンを見ているし、ニラだって表情こそ変わらないものの、視線は反応している。
しかし、そんな彼らを尻目に、アレンは撃った。