レベッカ
「海の上ってことは……国外へ出たってことか? でも、犯罪者が国外逃亡なんて、地獄どころか自由の身じゃん」
「だから、自力で逃げるんじゃなくて、誰かに連れてかれるんだと」
思ったんだけど。
自分の考えにそれほど自信がないのか、声がだんだんと小さくなっていく。
しかし、不意に明るい声を上げたロイは、アレンに興奮気味の顔を向けた。
「そっか。連れてかれたんだ」
「ん? なになに、」
「だから、俺たちが制裁を加えた重犯罪者を、他国に連れて行ってんだよ」
「え? それって」
「あぁ……人身売買だ」
ロイは一瞬、声を潜めた。
そんなことをしなくても周りの誰も、小声の肉声なんて聞こえていないだろうが、一応だ。
「そんなこと……してんの!?」
「まだ憶測だけど。でもそれなら、あんたにやりすぎてほしくない説明もつくし……“海の上”ってのがなにより、それしか考えらんない」
アレンに少し抑え気味でいけと言ったのは、関節を潰されたり、半殺しの状態にされては、奴隷として働くのに支障が出るからなのだろう。
それに、ロイが拉致された時に、マルクが漏らしていたという言葉。
――『お前があの小娘の暴走を少し早く止めるだけで、どれだけこの組織のためになるか』
――『今のままでは、組織にも国にも損にしかならない。儲かるのは病院と薬屋だけだ』
その意味するところが、人身売買による収入やコネのことだとするなら、辻褄が合う。