レベッカ
“あの事件”から二週間、アレンが率いる小隊は、ロイも含め、ようやく完全復活を遂げていた。
ロイの脇腹の傷痕ももうずいぶん薄くなっていたし、アレンの体力もすっかり戻って、マシンガン・ヤードの名に恥じない暴れっぷりを見せている。
なにしろ今日は、マルクからのストップがかからないのだ。
というのも、今回の相手は凶悪な犯罪者ではなく、突如街に大群で現れた、凶暴化した野犬の群れだからだ。
野良犬も野良猫もそれなりに多かったシガテラの街だが、それらの人慣れしていない犬たちが、突然狂ったように目に入るものを片っ端から襲いはじめた。
手加減要らず、容赦なくやれと言われたアレンたちは、もちろんその指令の通りに、全力で野犬の大群に向かっていった。
だが、相手は犬だ。
人間とは全く違う身体能力を持つ生き物である。
しかも、人間ならばこうする、次はこうくるだろうという予想を、ことごとく裏切ってくる。
撃っても斬っても次から次へと襲ってくるその数と、読めない動きに、苦戦を強いられていた。