レベッカ
妙に力強いマルクの言葉を最後に、しばらくの沈黙が訪れる。
喧騒が遠くに聞こえた。
薄暗い廃ビルの中は、静かで、冷たい。
アレンは、やがて、言った。
「私は何をすればいい?」
満面の笑みを浮かべたマルクが、アレンの肩を、ぽんと軽く叩く。
そして、言った。
「実はあの犬たちはな、信頼のおける私の部下によって、調教されているんだ」
「どういう……ことです……?」
「生まれた時から厳しく躾けてある。戦闘技術を教え込み、薬で凶暴性を増して。そして、ある音にだけ反応して、襲いかかるようにな」
わかるか、と、マルクが言う。
アレンは、これまでの戦況を思い出していた。
犬が反応して襲いかかるある音、とは一体、どれのことなのだろうか。
十数頭ほどの犬の群れが、一度に飛びかかってくる。
次から次へと、妙に統制の取れた動き。
接近戦を得意とするニラやナイジェルやキュウは苦戦していたが、彼らが戦闘中に特定の音を立てることなんてない。
そうすると、残るは――。