レベッカ




――ダアァァァァァァン…………




アレンは目を見開いた。
ナイジェルは小さく声を漏らす。
キュウは、口をぽかりと開けた。
ニラでさえ、目を丸くしていた。


数瞬のうち、反応を忘れていた。
まさか本当に撃つとは、アレンでさえ、思っていなかったのだ。

マルクは壁際に座り込んだままの格好で、胸を真っ赤に染めて、項垂れたように首を俯けていた。
もうあの頭が上がることはないだろう。


呆然としていたアレンが我に返ったのは、すぐそばで、地の底を這うような犬の唸り声が聞こえたからだった。
見ると、ナイジェルが、牙を剥き出し、黒い爪をアレンに向けて、飛びかかってこようとしている。

アレンは、思わず声を上げて飛び退いた。
その場所を、ナイジェルの鈍く輝く凶器が、通りすぎる。

しかし、身を引いたアレンを追って攻撃してくるわけではなく、地面に片手を突いて体勢を立て直すと、彼はそのまま走り出した。

予想外の行動に、理解と判断が遅れる。

ナイジェルが走りながら、さっき投げたライフルを拾い上げた。
ロイが叫ぶ。


「バカ、撃たせんな!!」





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