レベッカ
ナイジェルがライフルを手に取って走ったのは、間合いを取って反撃するためなどではなかった。
背中なんて向ければ、向き直ってライフルを構える前に、アレンの掃射の的になってしまう。
アレンに攻撃を与えるためではなく、ただ道を開けるために爪を振りかざしたのだ。
あの状況で、殺傷能力が高く多人数への攻撃力に優れたマシンガンではなく、口径が大きく一発の破壊力の大きいライフルを拾い上げた意味。
そして、ビースティーの脚力を駆使して、距離を取った理由。
ロイの短い叫びだけでは、アレンは咄嗟にそこまで気付くことはできなかった。
ナイジェルが、頭上に向かってライフルを向ける。
そして、困り果てたような、泣きそうな顔で、小さく笑った。
そこでやっとアレンは、彼の行動の意味を悟ったのだ。
ナイジェルは、ライフルを撃って、犬を誘き寄せる気だ。
そうしておいてから、銃口を地面に押し付けるか、銃身にへこみでも付けて引き金を引く。
発射できなかった弾丸は中で破裂し、他の火薬にまで引火して、爆発を起こす。
ロイのライフルに合わせた弾の大きさならば、その規模は決して小さくないはずだ。
ナイジェルは、自分で凶暴にした厄介な野犬たちを集めて、自爆によって一気に殲滅する気なのだ。