レベッカ



ロイとアレンには、物心ついた時から親がいなかった。

シガテラでは、別に珍しくもなんともないことだ。
適当な親戚の元へ身を寄せて、必要なものは自分で手に入れてくる。

当然正規の調達方法でないことは明らかだが、この街に住む子供の大半は、そうして暮らしていたのだ。

むしろ、両親が健在でしかもきちんと働いている、レベッカのような子供の方が、珍しかった。


「レベッカんとこは? 母ちゃん具合どう?」
「うん、最近ちょっと調子いいよ。仕事も増やしてるし」
「そっか。あ、俺ら昨日ナディに会ったよ」
「うん、聞いた。お姉ちゃんの友達いっつもケンカしてるね、って言われたよ。恥ずかしいからやめてよね、もう」
「うわ、ごめん」


レベッカは、妹の話をするときに一番優しい顔をする。

彼女の父親は街の定食屋のコックで、母親は体が弱いためあまり長い時間ではないが、掃除婦の仕事をしている。
レベッカは子供が好きで、七歳下の妹のついでに、近所の子供たちの面倒を一緒にみて、食べ物を貰ったりしていた。

忙しくて、生きていくのに精一杯で、毎日が大変で、それほど家族仲が良いわけでもない。
だが、一生懸命に生きていた。




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