レベッカ
そんな三人が、十六歳になった頃のことだった。
ある日、長い髪を揺らすレベッカの後ろ姿を見つけて、ロイとアレンは近寄って行った。
顔を見合わせてにやりと笑うと、気配を忍ばせた。
そして、息を吸い込む。
「わっ!!」
「きゃああぁぁ!?」
狙った通りの反応に、二人はけらけらと笑う。
レベッカは赤くなった頬を膨らませて、振り返った。
「ちょっと、子供みたいなことしないで!」
「そんな子供みたいな悪戯に毎回毎回引っ掛かるレベッカさん」
「きれーなカッコして、どこ行くのー?」
笑いながら言うと、呆れ顔が返ってくる。
「なにそれ、ナンパみたい」
「だいせいかーい」
「アレンにだったらついて行っちゃおうかなぁ」
「え!? 俺負けた!?」
その頃のアレンは今とは違って、レベッカとは対照的な短い髪をしていた。
凛々しい顔つきの少年と言われても、なんとか通るほどである。
得意気にロイを見たアレンは、自分より少し背の高いレベッカの隣に並ぶ。
「これから五番街で家庭教師なの。八歳の子に夜までずっとだよ、大変なんだよ」
「あ、新しい仕事決まったんだ。おめでと」
「頑張ってこいよー」
「ありがと。二人は?」
そう聞かれるとロイとアレンは、顔を見合わせて曖昧に笑うしかない。
その表情を見て、二人もこれから『仕事』へ向かうところなのだと悟ると、レベッカはそれ以上聞くのをやめた。