レベッカ
男には、強盗と強姦の疑いがかけられていた。
民家に押し入り、ナイフを突き付けて家の中にいた女性に暴行を働き、帰り際に金目の物を根こそぎ奪って来た、という容疑だ。
容疑ではあるが、それは事実だ。
他でもない彼自身が、そのことをよく知っている。
だから、自分がこうして実体のわからない相手に追いかけられていることにも心当たりはある。
だが、男は激昂していた。
なぜ自分がこんな意味のわからないものから逃げなければいけないのかと、そう考えていた。
見え得る範囲で、影はそれほど多くない。
せいぜい六か七、多くて十、といったところだ。
男は全速力で走りながら、ジャケットの内側からナイフを取り出した。
そして目についた小路に飛び込む間際、その手前を歩いていた女性の肩を掴んで、引き摺り込む。
「いっ……!? な、なんなんですか、あなた」
「うるせぇ騒ぐな、いいから来い!!」
そこは、行き止まりだった。