レベッカ
泥棒に入ったことがバレたのか。
地図がないことに気付かれたのか。
ロイとアレンは、小さく縮こまって物陰に隠れ、息を止めて様子を伺った。
いつの間にか、固く手を握り合っていた。
手のひらがじっとりと汗ばんでいる。
――しかし、二人の緊張に反し、旅人は、小路の前を通り過ぎて行った。
大きく息を吐く。
強張っていた体の力が抜ける。
旅人の姿が物陰からでは見えなくなってからも、二人で呆然と座り込んでいた。
よく考えてみれば、ロイとアレンの姿は、旅人には見られていないはずだ。
大男との格闘を目にしていたとして、厨房か警備の甘い四等以下の部屋ならまだしも、最上階の一等室に泥棒が忍び込んだとは普通考えないだろう。
それに、二人にだって自分たちが今どこにいるのかよくわからないほど、がむしゃらに走って来たのだ。
宿から見失わずに追って来られる者なんて、隠密のプロか、鼻のいい犬くらいのものだ。
「なぁ、ロイ……あいつ、ナイフ持ってたよ」
「あぁ」
「どこ行くんだろう」
ロイは再び、手元の紙切れに目を落とす。
シガテラの地図を持った、連続強盗殺人鬼。
見ると、ところどころに、しるしがついている。
丸と二重丸の二種類があるのは気になるが、地図にしるしがついていること自体は、特に珍しいことでもない。