レベッカ



七、八番街のあたりについた茶色い汚れを指で擦っていると、アレンがぼそりと言った。


「……あと、着けようか」
「……は?」


ロイが顔を上げると、アレンは建物の影から頭を出して、旅人の後ろ姿を目で追っていた。
慌ててシャツの裾を引く。


「なに言ってんのお前」
「だって、ナイフ持ってたってことは、またどっか襲いに行く気だろ? あの連続強盗、寝たきりのじーちゃんばーちゃんとか、小さい子供がいる家ばっか狙ってんだよ。卑怯じゃん。許せねぇだろ、そんなの」
「馬鹿言わないで、俺たちが行って何ができんの」
「止めるくらいはできる! 誰か逃がしてやれるかも」
「できるわけねーだろ!? 一緒に殺されるだけだよ!」
「でもっ!」


ロイは、叫ぶように言ったアレンから、目を逸らした。

強い意志を持った、大きな目。
この目に何度も頭にきて、折れて、背中を押されて、助けられてきた。

だから見ていられなかった。





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