レベッカ



「わかった、エド先生のとこに行こう。ここからならすぐだし」
「先生が信じてくれんのかよ」
「行ってみなきゃわかんねぇよ」


きっとアレンがさっき言いたかっただろう言葉を、先回りして言った。

けれど、本当はわかっているのだ。
二人が強盗殺人鬼を追い掛けたって被害は食い止められないことも、シドが信じてくれたって、独断でピースフォースを出動することなんてできないことも。

それでもロイは、そう言うしかなかった。
手元の地図を何の気なしに掲げる。


「ほら、まずは五番街の先生ん家に」
「ロイ」


ぱし、と、アレンがロイの手を掴んだ。
地図をじっと見ている。

ロイが紙切れを揺らした拍子に何か見えたのかと考えたが、そうではなかったようだ。
アレンは、茶色く汚れた部分に、鼻を寄せた。


「……アレン?」
「……やっぱり。さっきも思ったけど、これ、鉄の臭いがすんだよ」
「は? 鉄?」


は、と、ロイは紙切れを見た。
アレンが、ロイの顔を見る。


「たぶん……血?」


あの連続強盗殺人鬼が、犯行の時にでも持っていたのだろうか。
誰のものかもわからない、だがほぼ確実に今は生きていない人のものであろう血液に、背筋に冷たいものが走る。

だが、それが血だったからといって、犯人が今向かっている先がわかるわけではなかった。

ロイは、もどかしげに、地図に目を走らせる。






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