レベッカ
「なぁ先生、ピースフォース動かしてよ! 連続強盗殺人の犯人見たんだよ、八番街に向かってるかもしれねーんだよ!」
「強盗殺人犯!? 確かなのか」
「ぜってぇそうだよ、こんなにでかいノコギリみたいなナイフ持って出掛けたんだよ! あいつまたどっか襲いに行く気だ!」
なにか重要な事実を握ったらしいのだが、なにしろ要領を得ない二人の話し方である。
何をどう考えたらそうなるのか、とすら思ってしまう。
「待て、落ち着け! ピースフォースはそう簡単には動かせない。何を根拠にそんなこと」
「そんなこと言ってる場合じゃねぇんだって!! 早くしないと間に合わねぇんだよっ!!」
ロイが怒鳴る。
そして彼は薄汚れた紙切れのようなものをエドに押し付けると、アレンの腕を引いた。
「もういい、行くぞアレン! レベッカもうとっくに家に着いてる頃だ」
「っでも、」
「それ! 一等室の客が、ナイフと一緒に持ってた! 二番街の水槽の割れた宿っ!」
去り際にエドの手の中を指差して、早口で言う。
そして二人は、心底からの苛立ちを乗せた目をエドに向けると、走り去ってしまった。
「なんなんだ……二番街の宿? ノコギリ?」
言っていることは、まるでわからない。
ただ二人がそう思ったというだけで、私設警察であるピースフォースを動かすことなどできないのだ。
それでも、あの二人が、あそこまで血相を変えている。
エドは、急いで上着と受話器を取った。