レベッカ
小綺麗とはとても言えない身なりをした旅人が、振り返る。
手には大きなナイフ。
ノコギリのようなぎざぎざの刃から、ぼたりと赤いものが落ちる。
その足元には、小さな体が転がっていた。
八歳にしては体格の小さかった、ナディだった。
細い腕が、テーブルの下に投げ出されている。
肘と二の腕は、繋がっていない。
そのテーブルの周りには、白髪混じりの頭が二つ。
一つは胴体と離れた場所に転がっていて、どちらもすでに事切れていることは明らかだ。
そして、部屋の奥には、レベッカがいた。
開いたまま少しも動かない、見慣れた瞳と、二人の目が合う。
せっかくの綺麗な長い髪が、汚れて乱れてしまっていた。
ロイもアレンも、噎せ返るような血の臭いの中で、息をすることも忘れていた。
もうだいぶ近いはずのサイレンの音が、彼方で鳴っているような、耳の奥で鳴っているような、錯覚に陥っていた。