レベッカ



ピースフォースの出動を告げるサイレンはさっきから鳴ってはいたが、シガテラの喧騒はそんな音も掻き消すほどである。
なにより、旅の者であるがゆえに、その音を知らなかったのだろう。

あぁ、エド先生、信じてくれたんだ。
ロイはそう考えながら、アレンの体を右腕で庇う。

包囲されたのだと理解した旅人が、二人をちらりと見る。
ナイフを拾おうと身を屈めたその瞬間に、ロイは動いていた。

左腕を突き出す。
長い銃身が、ぴたりと旅人の頭を捕らえている。

遠距離射撃用のライフルをこの至近距離で発砲すれば、風穴が開くどころか、首ごと吹っ飛ぶだろう。
彼もそれに一瞬で気付いたのか、動きを止めた。

エドはきっと、彼らなら人質になることなどないと判断して、包囲を敷いたのだ。


「片手で撃つの?」
「腕の一本くらい使えなくなったって。あんたに殺されるよりマシだよ」
「それもそうだね。お前、正しいよ」


――バカだけど。






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