レベッカ
「……レベッカは?」
目を覚ましたアレンの第一声に、ロイは答えられなかった。
代わりに首を横に振ったエドが、アレンの感情を一切引き受ける羽目になる。
「なに、それ、ねぇなんで家燃えてんの」
「……強盗犯は、“バーニー”……炎の能力持ちだった。きっと君たちを殺せなかったから、証拠を隠滅しようとして、火を付けたんだ」
「は……? そんなこと聞いてんじゃねぇよ、レベッカは」
「だから」
「なぁ! 燃えちゃうじゃん、レベッカもナディも、父ちゃんも母ちゃんも!」
「……火の勢いが強くて、もう……」
「もうってなんだよ!! なんでだよ!? 死んでるから助けなくていいのかよ!!」
今にも泣きそうな顔で、燃え盛る建物とエドの顔を見比べるアレンに、ロイは触れた。
「やめろよ」と、静かに呟く。
アレンはその手を振り払った。
ロイの脇に指先が当たって、宿の用心棒に負わされた傷がずくりと痛む。
「なんでだよ……出してあげてよ……っ、」
「違うんだよアレン、俺が諦めたから」
アレンが、顔を上げてロイを見る。
泥や煤で汚れた顔の、目だけが、ぎらぎらと感情をあらわにしていて、見ていられなかった。