レベッカ




ウエイトレスの女の子ににこりと笑顔を返しながら、ロイが口を開く。


「ほんとはまだ勝手に食っちゃ駄目なんだろ」
「……なんでわかんの?」
「なんとなく。医者に止められてんだろ? ちゃんと言うこと聞いとけよ」
「えー……あんな雑炊で足りるわけないじゃん」
「まったく……で? 犯人、割れたわけ」
「まだわかんない。キュウたちも調べてくれてるけど」


聞かれたくない話、というのは、アレンの怪我の原因についてだった。

あの日の相手は、ピストルのアーミーと、ナイフを持ったバリア人の男、二人組の殺し屋だった。
チンピラ同士の喧嘩にまで割り込んで行って、金で殺しを請け負うような、悪どい商売をしている二人だった。


たまたま他に用事があって出動に加われなかったロイの代わりに、アレンが陣頭指揮を取った時のことだ。

路地で犯人たちを挟み撃ちにしたアレンは、少し様子を見ろとの指示を出した。

一人がピストルの能力持ちだということは、数回の発砲で分かっていたが、ナイフを手にしているだけのもう一人の男は、正体がわからない。
下手に先制攻撃をすれば、どうなるか想像もつかなかった。

だから、すぐには手を出さずに、相手が痺れを切らすまで待つ作戦を取るつもりだったのだ。


だが、それを無視して、犯人に特攻を仕掛けた隊員がいた。




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